岩手県としては、初めての県立リハビリテーション専門病院である。県庁所在地である盛岡市の中心部から車で西へ30分程、スキーのワールドカップで有名になった雫石町の山あいに位置するこの施設のために造成された敷地は、山々の谷を埋め立てた台地形状になっていて、周辺には民家も少なく、地域とのつながりは、南側に開ける眺望と豊かで厳しい自然を受け入れる事と判断した。

そもそもリハビリテーション医療は、患者の入院期間が長期にわたることが多く施設が内向きで活気を失い、訓練効果が十分得られないことも少なくない。従って本計画ではそういった沈滞的雰囲気に患者が陥ることのない様に、社会生活の延長としての病院生活を送れる施設づくりを目差した。

具体的には、
①地域文化、風土に根差したデザインの追求。
②入院患者と外来者、スタッフが普段の生活の中で交流し、没個的にならないプランの確立。
③厳しい冬期にも生活空間が小さく制限される事がない様にする工夫をする事を目標とした。
アトリウム

この地域によくみられるマンサード型のガラス屋根を持つアトリウムは、この施設のシンボル的存在である。各部門から直接アプローチすることのできるこの空間には、各部門の受付の他に売店、ラウンジ、CD、理容室等が設けられ、小さな町の賑わいをつくりだしている。精神的に閉じ込もりがちな患者が、外来者やスタッフと交流し、豊かな入院生活を送るための多様な場を持つ半屋外的空間は、厳冬期の屋外訓練の場ともなりうる。

Award

  • 医療福祉建築賞1995/日本医療福祉建築協会(受賞歴→

掲載誌

  • 会誌 『病院建築』 No.102(1994.1)
  • 会誌 『全国自治体病院協議会誌』(1996.7)
  • 会誌 『芸術工学会誌』 No.2(1993.11)
  • 雑誌 『病院』 Vol.55 No.12(1996.12)