福岡市近郊の山間に位置する当建物は、障がい者の生活訓練・作業活動を支えるとともに、地域福祉の拠点ともなる施設である。

障がい者の地域生活を支える民間運営の適所更正施設は、一般的には補助金の制約等により、RC造の単純な形態の施設が多く、また必要諸室の設置基準や面積基準は多少現実的でなく、必要充分な広さを確保できない面を有している。

今回の通所施設には、耐火構造の絶対的制約がない事もあって、木造校舎や木造住宅の持ち得ている空間の質の良さを見直し、再構築を試みた。

計画の条件として、豊かで効率的な生活の場の実現のために、次のような事が求められた。

  1. 職員が充分な介護をするのに適するよう事務室から全体がよく見通せること。
  2. 動線がコンパクトで分かりやすく、かつ避難が容易にできる単純明快な平面計画。
  3. 多目的に使用できるユニバーサルな空間。

設計の基本的な考え方

平面的には、中央廊下に沿ってクラスター状に各室を最適・最小化するよう配置した。作業指導室・訓練室・食堂を一体的に扱うことによって、大空間として利用できるようにした。

この空間は、断面的にも特徴を持たせている。採光・通風・眺望に配慮して気積を最大限確保できるよう、屋根を木造架構としており、心地よい広がりのある空間を生み出している。

内装は住宅的な雰囲気になるよう、木の使用を徹底して暖かみのある空間を目指した。

掲載誌

  • 書籍 『建築設計資料集成 福祉・医療』(2002.9)
  • 書籍 『建築設計資料 94 障害者の地域活動拠点』(2003.12)