芦屋市南端、潮の香りのする運河沿いに建つ180名のお年寄りの住まいである。揺れ動く介護システムを背景に、将来特養の基準があいまいになっても、介護を必要とする高齢者が住み続けることができる家を模索した。

特養ではユニット型個室基準により、居室はゆとりある空間を提供できるが、それだけに没個性的になりやすく、目も届きにくい問題がある。ここでは、各居室を一軒の家と見立て町屋風に配置し、入り口側を全面的に開放できる建具とすることで、路地(ユニット内共用部分)に対して濃密なコミュニケーションが発生する仕掛けとしている。

絶好のロケーションを活かしつつ、大規模施設にありがちな威圧感を消すために、徐々にスケールダウンしていく構成とし、内外デザインともきめの細かい配慮を心がた。