長年障がい者の福祉に尽力されてきた法人により計画された、障がいのある方を含めた高齢者の方々がともに暮らすユニット型特別養護老人ホームです。

計画地は武蔵野台地に位置し、かつては林を利用し畑を耕作して生活を営むという民家の暮らしがあった場所で、新しい宅地化が進む今もその名残である落葉樹の雑木林と畑が地域の風景を作っています。畑の中央に残された二本の巨大なしだれ桜を生かし、「みどりのまち」の象徴となる開放的な中庭を中心とする配置計画としました。建物を2層の高さに抑え、一部勾配屋根とし、壁面を分節して小さなスケールを積み重ねたような構成とし周辺の家並みとの調和を図っています。

居住の中心となるユニット部分は、それぞれを「いえ」と捉え、利用者と顔なじみのスタッフで豊かに暮らすための空間を追求しました。リビングとダイニングは光の入り方の異なる独立したスペースでありながら緩やかにつながり、入居者が全員で集まることも、各々が落ち着いて過ごすこともできるようにしました。

一方ユニット外は皆さんが集う「まち」として、街中でイベントが行われているような賑わいを感じられる空間を目指しました。エントランスホールを中心に隣接する会議室や職員食堂もホールに向かってオープンになり、さらに外部にも大きく開くことで中庭や周辺の緑と一体となって季節や天気の変化も楽しめるようにしています。

障がいをもつ方への配慮は、身体的には大きく変わらないとのことから基本的な設えを変えず、囲まれた屋外テラスなどで余暇を過ごして頂きやすい環境を調えました。スタッフの一員として障がい者の方の雇用も想定しており、活動の場としてもこの「まち」としての空間が機能します。入居者だけでなくスタッフも家族の方も近隣の方もみな含めた地域交流の場として、この「まち」が発展することを願っています。