この認知症対応型グループホームは、主として精神科医療を提供している医療法人が、病院の敷地内で運用するものです。病院全体が、脱入院化と通所や在宅ケアへの転換に取組む中で、このグループホームが自宅と入所及び入院施設との間をサポートする役割を担っており、地域との繋がりや状況に応じた病院機能との連携を図りやすいことが求められました。

ユニット型の高齢者の住まいにおいて、ユニットが安心できる場所であるがゆえに、逆にユニット内だけで生活が完結してしまう状況になりがちです。このグループホームでは双方2つのユニットが共有の土間空間を通り玄関にアプローチするほか、共に利用できるコミュニティホールを用意しユニットを越えた交流ができるようにしました。さらにこのホールと土間は、外部に向って大きく開き、テラスや外部空間と繋がるしかけをつくり、日常的に病院や地域の方とのコミュニケーションが促されることを期待しています。

グループホームは入居者にとっての日々の生活の場であることから、「居住空間」としてのありかたを追求しました。居室の窓先に縁側空間を設け、窓の外を眺められる縁台を設え、居室の面積を大きくしすぎることなくゆとりのある空間を生み出しました。この縁側空間と居室空間を隔てる間に障子を入れることにより、冬期における窓側の冷気を防ぐ効果をもたせました。建物全体の断熱・気密性能を上げ、床下にエアコンを設置し床から吹出すだけでなく一部の壁内や小屋裏も含め温度と湿度を調整した空気を廻すことにより、建物全体が外気の影響を受けにくくなります。主に冬季に居室内外の温度変動の少ない穏やかな環境を達成しています。