地域の「拠りどころ」となる病院
メンタルケアホスピタルみらい

富山市で地域に根ざした精神科医療を継続されている病院の移転新築プロジェクトです。入院患者だけでなく、社会復帰し地域の中で暮らす障がい者へのサポートにも幅広く取り組まれており、その核となる病院がより地域に開かれた病院であるべく、建築側からも体現することを追求しました。

西側外観 幹線道路に面して病室が並ぶ

幹線道路沿いに建つ市街地の病院

新病院は既存病院の向かい側への移転であり、交通量の多い幹線道路に面しています。周辺店舗の賑やかさの中でどのようにして存在感を出し、アクセスしやすくするかが求められました。

主に市中心部からのアプローチ側に外壁面と外構に象徴的なサインを配し、主玄関へ導いています。冬季における雨や雪に配慮し、広がりのあるピロティで車の乗降ができるようにしたほか、駐車場側にも庇を繋げて安全に通行できるようにしました。

安心感のあるエントランスホール

病院を訪れて最初に対面するエントランスホールには、ゆったりと座ることができる拡がりのあるスペースを用意しました。絵画を壁面全体に表現するアートウォールによってさりげない賑わいを演出しています。

一方で、このホールから緩やかに繋がる待合は、風合いを持たせた左官の壁を間接光で柔らかく照らし、診療前にリラックスできるよう落ち着いた空間としました。

十分な拡がりを持つエントランスホール

外来診療待合

連続的に繋がる病室と水廻り

新敷地は道路に面して横に細長い形状であることから、病棟も病室が主廊下に面して横並びで長く展開します。病室が主廊下にすぐに面するのではなく、風と光を感じる光庭と、水廻りや談話コーナーを挟む構成にしました。

患者にとって洗面所やトイレという日常生活に必要な機能の近くに光庭やベンチがあることで、病室から一歩出た先でコミュニケーションが生まれる場所となることを期待しています。主廊下の途中には扉を配置し、エリア分けできるようにしています。患者の属性や病状に応じてユニット的な運用ができるだけでなく、感染時の対応にも有効と考えます。

病室前に広がる光庭や談話ベンチ

病棟リビング

安定した個別スペースのある4床室

4床室は、個々のベッドが窓を有し、袖壁によって三方が囲まれた領域を持つ「個室的4床室」としました。間口を抑えたコンパクトな面積の中に一人で落ち着いて過ごせることができる空間を実現しました。各病棟にはいくつか仕様の異なる個室群も配置し、患者の状態に応じて相応しい環境を選べるようにしました。

ベット毎に窓と袖壁で囲まれた4床室

地域とともにみらいに向かう病院

今回新たに病院名となった「みらい」からは、精神科医療がより身近になり地域生活に溶け込んでサポートしていく新しい病院像が感じられます。この病院の想いを支える建築が、地域の中に自然体で寄り添う場所となることを目差し、完成しました。

VI*計画とアートディレクション(福見建築設計事務所)

夕景にサインが映えるエントランスまわり外観

「地域社会との対話・融和」を目指す新病院として、地域のランドマークとなる外観デザインはもとより、新病院名「みらい」をイメージする新ロゴマークの作成、サイン計画、各種印刷物やホームページのデザインなども建築計画に組み込み、トータルに提案しました。グラフィックはデザイナーとコラボレーションしています。

外壁タイルに採用している日本の伝統色「深紫(こきむらさき)」は、バランスを回復させる癒し効果の高い色として、ロゴマークの色合いにも組込んでいます。

インテリアにおいては、のどかな山並みの原風景をやわらかい色彩で表現した描き下ろしのイラストを大小さまざまなアートウォールやサインに取入れ、温もりのあるタッチで和やかで落ち着いた空間に何気ないやさしさを印象づけています。

外来待合アートウォール(※1)

談話コーナーとアートウォール(マグネット掲示板)

病室ごとにカットの異なるサインデザイン(※2)

*VI:ビジュアルアイデンティティ(視覚的統一)


建築概要

建築主: 医療法人社団 重仁会
所在地: 富山県富山市
病床数: 139床(精神科)
構造規模: 鉄筋コンクリート造 地上4階
延床面積: 5,178㎡
竣工年月: 2025年10月
設計監理: 福見・共同建築設計監理共同体
撮影: 増田寿夫写真事務所
エスエス・北陸支店(※1)
所員(※2)

文責:小島千知

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