細長い形状に無理に押し込めていた病棟が、その制約から解き放たれ、スタッフステーションからも見通しよく、動線も短縮されてまとまりのよい病棟とすることができた。 閉鎖空間の中で治療を受けなければならない患者にとって、採光、通風など外界を感じられる自然の変化を適切に取り入れることは、社会復帰に向けて生活のリズムを作り、意識を外に向けていくためにも重要になってくる。この病棟では南面に大きな開口を持った食堂、デイルームを配していて、時間の変化が感じられる、日中を気持ちよく過ごせる空間となっている。また、この地は南北方向に心地の良い風が吹いていて、是非この風を病棟に取り込んでほしいとの院長の願いを受けて、病室には廊下側にも通風窓を設け、病棟内をさわやかな風が通り抜けるようにしている。

デイケア棟は地域に暮らす患者のための家庭的な雰囲気の木造の大屋根を持つ建物で、内部は大空間でありつつも、さまざまな居場所が確保されている暖かみのある空間とした。また、職員のための院内託児所を併設していて、中庭を囲んで2つの施設が緩やかにつながっている。利用者は自然な形で地域社会との連続性を感じることができる。