福井市内の市街地に建つ精神科病院の建替プロジェクトです。建替えを機にこれまでの長期入院主体の医療から地域連携を強化した外来診療と急性期への対応へ転換するという病院の方針に対して建築としてどのように応えていくかがテーマとなりました。

既存病院の向かい側という立地に、L字型の敷地形状をそのまま型取った形状の建物は、L字型の角の交差点に主玄関を置き、広がりのあるピロティを介して天候の影響を受けずにわかりやすくアクセスできるようにしました。病院の顔であり、地域との接点でもあるエントランス廻りは落ち着きと柔らかい印象をつくるため、木や和紙などの温かみのある素材を用いたインテリアにしました。ガラス面を用いたホールは北向きの安定した自然光を取り入れて明るい空間としながらも外部とは植栽やシェードでさりげなく視線を遮るようにし、新病院のイメージである「木漏れ日の差す場所」を空間的に実現しています。

2つの病棟もこのL字型の平面の中央部にスタッフステーションを配置し、2つの方向に延びる病室群と共用部を見守りしやすくし、病室の端までの距離感を小さくしています。

より身近になりつつある精神科医療を受けとめる役割を担っていくこころの森病院が、地域の日常の中に溶け込み、自然に寄り添う姿となることを期待しています。