駒木野病院は、高尾山のふもとに位置する病床数482床の民間の精神科病院です。病院から見える高尾山の眺望は素晴らしく、ここが都内であることを忘れさせる自然豊かなロケーションです。
本計画は、老朽化した病棟159床の建替えです。敷地内には複数の既存棟により、増築余地が限られています。その中に1フロア40床前後の病棟を、コンパクトにしつつも豊かな入院環境を整備すること、スタッフの見守りがしやすく合理的な動線計画とすること、を目指して計画しました。
敷地周辺は、住宅地で低層建築物が広がっているのに対して、敷地の狭さからどうしても高層となります。それをいかに威圧感のないデザインとしてまとめるかが命題でした。建物の外壁面を細分化して積み上げることで、大きな壁面が高くそびえる印象を和らげるという手法を用いました。色彩はアースカラーを中心とし、周辺の住宅地・自然豊かな環境にマッチさせることを意識しました。
病室は、個室・多床室・個室的多床室を、4病棟それぞれの特性にあわせて使い分けています。特に個室的多床室は、ベッド間を建具で仕切り、視覚的にプライバシーを守るだけでなく、遮音性に配慮しました。その為、個室にいるのとあまり変わらない環境で生活を送ることができます。
東側隣地は、駒木野病院の創設者のご自宅でしたが、八王子市に寄贈、のちに整備され、駒木野庭園として地域に開放されています(外観写真)。東側の病室や1階に設けたホールからは、この庭園を正面にすることができ、高尾山の風景と相まって心を一層和ませてくれます。