京都にある国立附属看護学校3校を統合し、京都医療センターの附属看護助産学校の一部校舎を生かしつつ、大型校として再構築したプロジェクト。未来の医療分野を担う、若く希望にあふれる学生にとって、感性豊かに充実した学生生活を過ごす場にふさわしい空間となることを目指した。

学習の場は、柔軟なカリキュラムを組みやすい教室配置としているが、同時に、学生の憩える空間、授業の合間を楽しく過ごせる空間を屋内・屋外の様々なところに配置している。何気なく過ごす中でも一日の変化や季節の移り変わりが自然と感じ取られるような「場」を、京都という地域性を感じ取れる素材を建築やアートワークに織り込みつつ、それらの空間に設えている。知識・技術の習得は無論、仲間との語らいや、この学校での出来事をより印象的な背景とともに思い出として感じてもらうことで、将来、感慨深い思い出のひとコマになることを期待したい。

建物の特徴としては、意匠・規模のまったく異なる既存建物3棟(助産学校棟、宿舎、体育館)の隙間を縫うように増築ボリュームを組み込み、最小限の外装リニューアルによって、全体としてまとまりのあるキャンパスとして再構築をしている。

増築学校棟は、意図的に既存建物から25度振った軸線を織り込むことで、既存教室との間に開けた中庭を設け、各教室との緩衝帯として機能させつつ、直交しない視線の抜け方を利用した開放的な学生の憩いの場を設けている。また、学生の主要動線である階段にゆとりを持たせ、季節や時間とともに表情を変える仕掛けを組み込んでいる。

図書棟は、無表情だった体育館の側面を覆う形で、新しい学校のファサードとして構築している。1階は、学生の賑わいが前面に出る学生食堂を配し、その奥のやや落ち着いた場所に、3校統合されることになった書籍を収蔵する図書室を配置している。