茨城県の西部、筑波山の西側に広がる筑西市にある下館病院は、精神科198床の病床をもつ病院である。今回のプロジェクトは、築35年を経過して老朽化の激しい病棟の改築を中心とした、3期にわたる現地建替計画である。

設計に当たっては、院長から「適切な外来診察により入院を決意した患者さんが、病棟を目の当たりにしてその古さに躊躇して、入院診療を断念してしまうことが多く、無念である。」という苦い経験のお話を受けて、明るく親しみのある病棟を目指した。

1期工事で建設された病棟は、1階に全室個室の急性期対応50床の病棟を配し、2階には4床室を中心とした50床の精神一般病棟を重ね、自然の中にとけ込んだ、ゆったりとした低層の建物とした。1階の急性期対応の病棟は全室個室にしたことと、2つのゾーンを形成することにより、統合失調症の患者とストレスケアの患者という、症状も治療内容も異なる患者を同一の病棟でケアすることが可能な形となった。

L字型の病棟は大きく2つのゾーンに分かれ、さらに各ゾーンも中庭を囲んで緩やかに2つのクラスターに分かれていることによって、さまざまな症状の患者同士が互いを気にすることなく落ち着いて治療に専念することができるようになっている。また、スタッフにとっては死角が少なく、見通しよく観察できるように配慮した。各ゾーンには食堂としても使えるリビングルームや浴室があり、将来的に小規模の病棟として運営することも想定した造りにしている。

さらに、保護室エリアは救急処置室を併設し、病棟外から直接アクセスできるようになっており、興奮状態の患者を他の患者の目に触れることなく病棟へ誘導することができる。

2期工事は、医局棟(1階に厨房を配置)、3期工事は、既存棟改修により、デイナイトケアを完備させた。