50年程前に開設した松崎病院は建物の老朽化や医療事情の変化に呼応するため、斜向かいの敷地へ「豊橋こころのケアセンター」として移転新築しました。住宅が密集する地域の中、突出したスケールとなる病院建物をいかに周辺住宅地に馴染ませるかが課題となる一方、その存在が地域のランドマーク=地域の拠り所となることも意識しました。

住宅地に与える圧迫感を低減するため、外壁を分節し、窓には小庇を設置し日除け機能に加えファサードの軽快さを演出しました。最上階は斜線制限によりセットバックしていますが、外壁材を切り替え、下階からの繋がりを敢えて切り離し、存在感を消す操作を行っています。

既存樹木を出来るだけ残し、地域との連続性を崩すことなく建物周囲を木々で囲むことができ、開設当初からの病院のコンセプト「あふれる緑、心のひろば」を体現しました。

エントランスのメインアプローチをピロティとして雨のかからない外部空間とし、内外を曖昧にしたホールを配することで内部空間に広がりを持たせ、地域の方々が中の様子を伺いやすく入って来やすい開かれた病院を実現しました。

個室型4床室を3室向き合わせることで、廊下の面積を圧縮しコンパクトで効率のよい病棟としました。状況に応じて病棟を2つに分割でき、個室を1箇所に固めストレスケアユニット等への変換を可能にするなど、今後増加していく急性期・救急医療への対応を柔軟に行え、将来変化に対応できるフレキシブルな構成としました。高層階配置となる病棟は、内装にできるだけ天然の素材を使い、廊下のそこここに小さくてもゆとりのスペースを設けることでコンセプトの実現を心掛けました。