公立松任石川中央病院は、平成元年に現在地に移転新築して以来、地域の中核的な医療施設として発展し続けている病院です。

今回の医師住宅の計画は、次のふたつの理由により実現したものです。ひとつは、診療部門が想定を上まわる速度で拡張してきており、特に高度医療部門の増築が計画されたため、当初は敷地の端部に建設された従来の医師住宅用地が、その展開のために必要不可欠と考えられたことです。

もうひとつは従来の医師住宅が所帯向けで、単身者用住宅を院外に求めていたため、集約して使い勝手をよくする必要があると考えられたためです。それらの理由から、敷地内に両者を合わせた住宅が建設されることになりました。

移転新築時には充分と思われた敷地も、移転新築後20年を経過して、新たな住宅用地選定の選択肢は限られており、病院西側の駐車場の一角を充てることになりました。この立地条件が、基本的な設計コンセプトを決定する要因になりました。住宅は4階建てで、1階がピロテイ状の駐車場、2,3階が所帯用住宅、4階が単身者用住宅という構成で、軸線を南北に対し45度振った平面形を採用しています。駐車台数の低減を最小限にすること、駐車場からの視線、また病棟と正対することによる相互の視覚的な不具合を避けることを意図して選択した形態です。

南側の駐車場側からは、サンルームとバルコニーが雁行する個別性の高い表情を持ち、北側の外周に対しては、共用廊下のガラススクリーンによるモダンな表情を見せています。妻側の外壁タイルを病院と同じものにすることにより、敷地内で一体的な印象を保ちつつ、機能の違いを感じさせる建物になったのではないかと考えています。