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今から22年ほど前、日本医療福祉建築協会による「高齢者ケア施設設計競技」において、私たち共同建築設計事務所の「Wakabayashi Project」は優秀賞5点の中に選ばれました。課題は定員30~50人程度の入所施設。しかし、それに対して私たちが提案したのは入所施設ではなく「住み続けられるマンション」でした。地域計画的視点と住居単体の改善、それらをつなぐケアシステムの構築を目指しながら提案を作りました。提案主旨の中で私たちはこう述べています。「2020年に在宅での生活が不可能な方が果たしてどれくらいいるのか、私たちの想像の域を超えています。選択肢として施設ケアも残るかもしれない。しかし、少なくとも建築は単体では存在しないので、現状の矛盾だらけのシステムの中にあって、1個の施設をより良くする以上にやるべきことがあった、というのが私たちが施設を作らなかった理由です。」

あれから20年以上の間に地域包括ケアという考えが確立し、まさに、高齢者のすまいそしてそれを支えるネットワークは多様化しています。私たちは一設計事務所であり、日常取り組む建物は1つ1つ単体の建物ですが、地域と共に歩むクライアントと志を同じくしながら、結果として私たちもまちづくりに関わって来られた幸運を感じずにはいられません。

今年竣工した、「Hauskaaかすみの野」「潮騒の家」という2つの高齢者の住まいとともに、その歩みを紹介します。

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