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隣接医療施設と精神科病院の有機的な再構築

医療福祉センター倉吉病院

法人が運営する様々な施設が点在する敷地周辺の全景

鳥取県の中部地域において、精神科病院と一般病院を併設する医療法人が、精神科病棟の再編成と共に両院でその機能の共有・連携を強化し、地域医療全体を担い、展開するための再構築を行ったプロジェクトです。

増築を一部行い既存棟のポテンシャルを充分に活かし設備を含めた内部全面改修をすることで建物の長寿命化を図りました。

2021年に核となる増築棟(中央棟)が完成し(※1)、その後約1年をかけて既存の精神科病棟(倉吉棟)の全面改修を行いました。分散していた精神科外来、精神科救急、一般救急、一般外来を近接させ、新旧エントランスから迷うことなくアプローチできるような形態とし、増築部分と改修部分が違和感なく一体化するような空間づくりとしました。既存棟内にエレベーターを追加することにより、縦動線の整理、セキュリティーの改善も図りました。

※1:増築棟については、社外報 2022 で紹介しています

再構築前

増築棟新設、既存棟改修完了後

各病棟の明確な特徴づけ

増築により病棟面積を増やし、各病棟の明確な特徴づけを行いました。

認知症治療病棟 ゆとりのある空間
介助や観察のしやすさ
急性期治療病棟 状態に応じた多様な病室
精神科救急への移行を視野
精神療養病棟 閉鎖・開放の特徴づけ
変化への対応
精神一般病棟 患者の高齢化・合併症への対応

急性期治療病棟では、保護室・強化個室・準強化個室・4床室といった患者の状態に応じて環境を変えることができる病室構成とし、増築棟の独立部分を活かし、ストレスケア病棟としています。改修されたスタッフステーションカウンターは、オープンにもクローズにもすることができ、患者に寄添った穏やかな見守りを行うことができます。

ユニットの形成と個別性の重視

改修棟の4床室は、既存の整形な4床室形状を活かしつつベッド間に新たに間仕切り壁を設け、患者のプライバシーや個の空間づくりに配慮しています。広さは変わらずともベッドや身の回りの家具配置を好みに応じて配置しやすくしました。また、中央棟病棟と同様に病室群の身近に洗面や便所等の水廻りをコンパクトにまとめています。

多様な居場所と社会復帰への工夫

病棟内には、食堂に加えてデイスペースや造作ベンチ等、病室以外の小さな居場所を各所に設け、病棟の一歩外に自然な交流を誘発する仕掛けを用意しました。病棟外には、社会復帰に向けてより積極的な活動を支えるデイケア、生活機能訓練室、作業・運動療法室等が配置されています。

変化への対応と環境づくり

全体面積に余裕を持たせたことで、変化に対応できるゆとりある構成になりました。個別浴や機械浴等を複数用意でき、プライバシーに配慮し、入浴方法の選択肢も増やしました。一方で、患者空間以外に職員食堂やラウンジ等のスタッフスペースも充実させ、潤いのある病院づくりを心掛けました。

増築工事スタートとほぼ同時にコロナ禍となり、改修工事完了までほぼリモートでの打合せのみとなりましたが、地元の設計事務所の協力を得ながら思いを込めて監理しました。未だ制約の多い状況下ですが、イベント等が再開され、まちとシームレスにつながり、地域に開かれた病院となることを期待しています。

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