30年以上前に開所した特別養護老人ホームの移転新築プロジェクトです。

全室個室のユニットケアになることは、入居者にとってもスタッフにとっても大きな環境の変化です。個室になり、プライバシーが保たれながらもこれまで通り見守られていることが感じられるつくり方を模索しました。スタッフにとっても、ユニット内の移動動線を極力短く、また他ユニットとの連携もとりやすい構成が求められました。

これらのことを実現するため、構造体に対して、ボリュームを45°傾けてはめ込むような構成としました。これにより、10の居室と共用空間がうまく噛み合い、キッチンからはユニット全体を見渡せる配置となっています。共用部を居室8室で囲むように配置し、そこから効率的に見守りができるようにしました。また、傾けることにより各居室には小さいながらもバルコニーが生まれました。それにより、軒で日差しを遮ることもできました。この試みにより、内部空間を効率よく構成できただけではなく、外観デザインのおもしろさや、一つ一つのユニットの「家」としての独立性も表現することができました。

各階にはオープンスペースとなっている機能回復訓練や喫茶ラウンジなどユニット外の居場所を設けました。併設された託児所からは子供たちの声が聞こえてきます。

施設名称の「カーサ・ミッレ」は「千の家」という意味です。入居しているひとりひとりの方が、最期まで自分らしく過ごせる場を目指しました。