「Passo(パッソ)」は地域で暮らす知的障がい者の生活をサポートする場としてオープンした。
デイサービスセンターでは、利用者各々のプログラムの展開に対応できる空間が必要とされ、同時に、今後確実に起こると考えられるサービスの多様化や変化(ショートステイやナイトケア、知的障がい児の受け入れ、重複障がい者の受け入れ等)にも対応でき、さらに、地域の住民、関連法人の職員などにもこのハードを有効に利用できることが求められた。限られたスケールの中で、これらのことを実現させるため、極力シンプルな形態、デザインとしつつ、スケールや機能の異なるいくつかの空間を用意し、目的に応じて使いこなすことができるようにした。特に、利用者がメリハリを持ちつつ穏やかに過ごすことができる様、安心してくつろげる柔らかさと自宅にいる時とは違う多少の緊張感との両面を持ち合わせたデザインを心掛けた。
Passoでは「スヌーズレン」という感覚に訴える機能訓練を取り入れているが、日常的に肌に直接触れる素材は感触にこだわり、手に触れる家具や建具、浴室の手摺までも木質系材料であるMDFを用いている。作業室は製作活動による汚れや体を動かした時のクッション性に対応し、素足での感触が心地よい無垢のフローリング材を浮き床工法で仕上げ、食堂や階段、浴室、脱衣室には温かみのあるコルクを用いた。
オープン後は、既に地域の中で暮らしている知的障がい者、その生活を支える家族やスタッフの拠点となり、地域住民も含めた交流の場となりつつある「Passo」の環境づくりにハードという面から参加できたと思っている。